クランフォード(Cranford)第1話のあらすじと感想

2023年5月16日

クランフォードは登場人物のそれぞれが魅力的というだけでなく、ストーリー、衣装、舞台が素晴らしいのでおすすめです。

エピソード1から感動できるシーンがあり、ユーモアもあって楽しめます。

イギリスのヴィクトリア時代、「クランフォード」という小さな町が舞台です。
(マンチェスターとリバプールの近くに位置する「チェシャ―(Cheshire)」という町がモデルであるとされています。)

クランフォード(プライムビデオ)
Cranford (Prime video)

メアリーが居候をしにやってくる

第一話「1842年6月」

姉妹二人ぐらしのデボラ(アイリーン・アトキンス)と、マティ(ジュディ・デンチ)の家に友人の娘のメアリー(リサ・ディロン)が居候をしにやってきます。

「居候させてください」とお願いするメアリーの手紙が届いたのは彼女が到着する1時間前。
メールなんてない頃ですから、手紙が届くのに日数がかかります。

二人の姉妹はメアリーを迎え入れるために慌てて部屋の準備をします。
電気のない時代なので、家の中がうす暗いのが印象的です。

姉のデボラは・・・
少しぶっきらぼうだけど、彼女の判断はいつでも正しくて、人情にあふれ正直な女性。

妹のマティは穏やかで心優しく、
「メアリーが馬車でやってくるのは寒いだろう」
と心配したり、部屋に花を飾ってあげたりと気遣いを見せます。

ジュディ・ディンチのソフトな話し方がとても癒されます。

メアリーのお土産は箱一杯のオレンジでした。

鉄道もオレンジも珍し買った頃で、特に鉄道についてはまだまだ信頼されていなかったようで「鉄道」と聞いてデボラがいぶかしげな表情を見せます。

「オレンジは穴をあけて吸って食べるのが好きです」
というメアリー。

「『吸って食べる』なんてことはしません。それなら各自の部屋で食べましょう」
と提案するデボラ。

それぞれの部屋できれいにカットしたオレンジを上品に楽しむデボラ、
メアリーの提案通りに穴をあけてオレンジの果汁を吸って楽しんでみるマティ。

二人の対照的な姿が印象的で、どちらも幸せそうでした。

当時の灯り事情、ろうそく

エピソード1でのポイントの1つが「ろうそく」です。

この時代は電気がなかったので、夜はろうそくを灯すが一般的です。
しかしながら、当時のろうそくは貴重品。

「読書が大好き」というメアリーに
「うちはキャンドル2本を灯しているのよ」

と、マティは応えますが、実際は1本しかともさないことがしばしば。
夜に誰かが訪ねて来た時に急いでろうそくを2本灯したりします。

イケメンのハリソン医師が町にやって来た

クランフォードでは、昼の12時から3時までがお客様を迎える時間です。
デボラたちは暖炉の前に静かに着席して誰かが来るのを待ちます。

その日にやって来たのはモーガン医師(ジョン・ボウ)でした。

「近々、若い医師を迎えることにしました」
と伝えにきました。

「若い医師が?
町内の他の住人にもお伝えになるのでしょうか?」

「いいえ、ポール夫人に話しておきましたから。
すぐに話を広めてくれるでしょう」
とモーガン医師。

町にはそれぞれの役割があるようです。

「若い医師がやってくる!」
と、噂話をいち早く広めるのはポール婦人(イメルダ・スタウントン)です。

イメルダ・スタウントンはハリーポッターのアンブリッジ役でご存じの人が多いかもしれません。
(私は90年代のイギリスのシットコムでイメルダのコミカルな演技を見て以来、ずっと彼女のファン)
彼女は、素晴らしい女優ですが、こういったコミカルな役は際立って上手だと思います。
表情も仕草もどの瞬間も観ていて飽きません。

お約束のようにやってくるのはイケメン青年医師です。

ハリソン医師(サイモン・ウッド)はロンドンの流行りのスーツをまとって到着しますが、先輩医師に

「クランフォードでは医師は黒を着た方がいい」
とアドバイスされてしまいます。

そしてやってきて早々、ハットン家のソフィー(キンバリー・ニクソン)に一目惚れしてしまいます。

ハリソン医師が行う最新医療の手術

ハリソン医師のもとに木から落ちてしまった大工のジェムが運ばれてきます。
ジェムの腕は複雑骨折していました。

「クランフォードではせいぜい腕を切断するぐらいの医療技術しか揃っていない」
とモーガン医師はハリソン医師に断言します。

しかしハリソン医師はモーガン医師の言うことを聞かず、最新の技術を使って手術をすることにします。
必要な道具を揃えるためにマンチェスターまで馬を走らせます。

現代でいうなら、バイクを飛ばして道具を調達するといった感じでしょうか。

しかし、夕刻にクランフォードに戻ったハリソン医師は落胆してしまいます。
一刻も早く手術を始めないと、ジェムが感染してしまうかもしれないというのに、手元を照らすためのろうそくが足りないことを悟ります。

雑貨屋に行くと、

「ろうそくが入るのは金曜日ですよ」

と、店主はのんびり説明しながら、ハリソン医師が先日オーダーしていた黒いジャケットを彼に羽織らせます。

噂好きな町には、
「ジェムの腕が切断されてしまう」
と、すでに広まっています。

ジェムは大工仕事で生計を立てているので、腕がなくなってしまうと生きていけません。
町の住民にとってもジェムが必要です。

雑貨屋の前で意気消沈して座り込むしかないハリソン医師。

その姿を見かけたキャロライン(セリナ・グリフィス)は、デボラの家を訪ねて、

「ハリソン医師はすでに喪服を着ているのよ!
ジェムの命はもう危ないのかもしれない・・・!」

と、話を広げます。

見かねたデボラは、事の真相を確かめるためにハリソン医師を招き入れます。

「ろうそくがないから明け方まで待たなくてはいけない。
でも手術の成功率が下がってしまうかもしれない」

と落胆を隠せないハリソン医師。

集まっていた女性たちは知り合いたちにも声をかけ、貴重なろうそくをかき集めます。
そしてハリソン医師に差し出します。

「こんな(親切な)ことはロンドンではなかった」

と、心打たれているハリソン医師にデボラが言います。

「ここはロンドンではありませんよ、クランフォードですよ」

ウーマンパワーというのか田舎の人情というのか・・・
彼女たちの心意気に心が打たれます。

何度も観ても、私はいつもここで涙ぐんでしまいます。

もちろん手術は成功を収めます。
モーガン医師もハリソン医師の手腕を認めます。

ハリソン医師の助手をしたのはメアリーでした。

読書が好きで文章を書くのが上手、落ち着いていて洞察力があり、そして肝もすわっています。
知的で洗練された女性だということがよく伝わります。

カーター氏とハリーの出会い

ジェムが担ぎ込まれたそのとき、カーター氏(フィリップ・グレニスター)とハリー(アレックス・エテル)の出会いがありました。

ハリーはジプシーの子供で、貧しい家には小さい弟や妹たちがいました。
お母さんは大きなお腹を抱え、父親はふらふらと出かけて帰ってきません。

少しでも食費を稼ごうと、ラドロー夫人(フランチェスカ・アニス)の敷地内にある川で魚を盗み、町ゆく人に声をかけて売ろうとしていました。

カーター氏はラドロー夫人の土地の管理をしており、敷地内で盗みがあったと聞いてハリーを捕まえます。
ちょうどそのとき、ハリソン医師がジェムの腕を冷やすための氷を要求したため、カーター氏はハリーに氷を運ばせる仕事をさせました。

それで盗んだ魚の件は見逃したのです。

二人の関係は後々、視聴者の心を揺さぶるような展開になります。

キャプテン・ブラウンが越してくる

デボラとマティの家の向かいの空き家に、キャプテン・ブラウン(ジム・カーター)と2人の娘が引っ越してきます。

クランフォードに新しい人がやってくるのは珍しいことで、デボラたちはポール婦人と一緒に窓から引っ越しの様子を観察します。
窓からのぞく顔は、外からがっつり見えていただろうに、お構いなしに凝視しているのがちょっと笑えます。

デボラたちは、しばらく人がいなかったキャプテンの家にラベンダーを焚いてあげました。
そのお礼をするためにキャプテンはデボラたちを訪問します。

ところがキャプテンは、町の「訪問のマナー」などお構いなしの様子です。

「作家はサミュエル・ジョンソン好きです」

というデボラに、キャプテンは

「チャールズ・ディケンズの方がよい作家だ」

と無邪気に主張します。

そして、ディケンズの本「The Pickwick Papers」を「ラベンダーのお礼に(A small token of my gratitude.)」といって半ば押し付け気味にデボラに手渡します。

本好きなメアリーはディケンズの本に興味津々でしたが、デボラはそんなキャプテンの無神経とも取れるような態度にあまり良い気がしていません。

キャプテンは悪い人ではありません。
大きなお腹を抱えたハリーのお母さんが、中身の入った鍋を落としてしまったとき、クランフォードの人たちが知らんぷりをする中、キャプテンは進んで手を差し伸べます。

そしてハリーたちに優しい言葉をかけてあげます。

「ディケンズの読み過ぎじゃないかしら?」
「クリスチャン精神なのよ」

デボラやメアリーはそう分析しましたが、クランフォードの中だけで生きてきた人たちにとって、よそからやって来たキャプテンの振る舞いはどう解釈していいのか分からなかったのかもしれません。

キャプテンとの友情

数日後、キャプテンはある仕事をするためにしばらく家を空けることになりました。

「娘に何かあったら世話をしてあげて欲しい」
と、デボラに依頼してきました。

キャプテンの娘はどちらも成人しており、次女のジェシー(ジュリア・サワラ)は

「頼まなくても大丈夫なのに・・・」
と、遠慮します。

デボラは、
「ご近所さんですから、助けるのは適切ですよ」

と、事務的かつ社交辞令として答えてその場を去ります。

あぁ、よそよそしい。
彼女はまだ根に持っているみたいです。

ところが、ジェシーの姉は引っ越してきたときにはすでに体が弱く、ブラウン氏の不在中に亡くなってしまいます。

ジェシーは取り乱してデボラたちに助けを求めます。

ただ一つ、姉の葬儀のことで困ったことが起こりました。

「女性は葬式には参列できない」というのがクランフォードの慣習です。

キャプテンに連絡を取ることができません。

ジェシーは「姉ひとりで埋葬されるのは耐えられないから」
と、キャプテンなしで葬儀に参列することにしました。

クランフォードでそんなことをすれば、人々から好奇の目といぶかしげな目で見られることは間違いないでしょう。

キャプテンから娘を任されていたデボラは、一晩寝ずに考えました。
そして祈りました。

葬式の日の朝。

ジェシーは姉の棺の後を弱々しくすすり泣きがらついていきます。
そこへデボラが現れ、ジェシーの横について歩き始めたのです。

マティは心配そうに窓からデボラを見つめていました。
クランフォードの人々は驚きが混じった表情を見せます。

参列することは町の慣習ではないし、町の人も反対したことでしょう。
でも、姉をなくして弱っていたジェシーの横を一緒に歩くことが人としてするべきことなのだということ、それがデボラが一晩祈って出した結論だったのでしょう。

数日後帰宅したキャプテンは、

「一人で大変だったね」

とジェシーに声をかけます。
ジェシーは答えました。

「私は一人じゃなかったのよ」

キャプテンはオークの木を削ってコールシャベルを作りました。
それは、暖炉で石炭をくべるために使うシャベルです。

彼が初めてデボラたちを訪れたとき「違うサイズのシャベルが欲しい」と姉妹が話していたのを覚えていたのです。

キャプテンは今回も、
「A token of my gratitude.(感謝のしるしです)」

と言ってシャベルを手渡します。

前回とは違って彼の心がこもっているシャベルです。

キャプテンの手作りだと聞いてデボラの心が開きます。
そして、

「感謝のしるしなんていりませんよ。
私たちはご近所さんではなく、もう友達なのですから」

と、答えるのです。

素朴な会話ですが、胸が熱くなります。

その後みんなで暖炉を囲んで着席する姿がとても暖かく愛らしいです。
テーマの音楽も牧歌的でドラマにとてもあっていると思います。

私が観たDVDは英語版です。

イギリス英語がとても美しいので、楽しくリスニングができます。
このDVDには英語字幕が入っていますので、字幕を表示しながら視聴すると早読みの練習にもなります。

日本のアマゾンでも入手できますが、イギリスのアマゾンで入手する方がぐんとお得です。
日本と違って、イギリスのDVDセットは格安になることが多いからです。

イギリスアマゾンで購入できる「クランフォード」はクリスマス・スペシャル版も含まれているのに8ポンドぐらいしかしないのでおすすめです!

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