「ツール・ド・フランス(Tour de France)」は、毎年7月にフランスを中心に開催される世界最大級の自転車ロードレースです。全21ステージで構成されており、山岳や平坦、タイムトライアルなど多様なコースを選手たちが約3週間かけて走破します。総合優勝者には「マイヨ・ジョーヌ(黄色いジャージ)」が授与されます。
2014年は、そのルートがイギリス国内にまで延びることになりました。ツール・ド・フランスはたびたび海外で開幕(グラン・デパール)を開催しており、これは大会の国際的な魅力を高めるための伝統的な取り組みとのこと。1970年代以降、フランス国外でのスタートが定期的に行われています。
特に、2012年のロンドン五輪や同年のツールでイギリス人選手ブラッドリー・ウィギンズが初優勝したことにより、イギリス国内での自転車人気が急上昇していたことが大きな後押しとなったようです。また、ヨークシャー側が非常に熱心に誘致活動を行ったことも決め手となったそうです。美しい風景とチャレンジングな地形がツールにふさわしいと評価されています。
イギリスでは、2007年にもルートが延び、第0ステージでロンドン市内を回り、翌日の第1ステージはグリニッジを経てイングランド南東部ケント州を南下し、最終的に「Canterbury(カンタベリー)」へ到達しました。
2014年ツール・ド・フランス
2014年のスタートは、「Leeds(リーズ)」という都市から。イギリス国内でのスケジュールは以下の通りです。
【7月5日(191km)】 Leeds(リーズ)-Harrogate(ハロゲート)
【7月6日(198km)】 York(ヨーク)-Sheffield(シェフィールド)
【7月7日(159km)】 Cambridge(ケンブリッジ)-London(ロンドン)

リーズ、ハロゲート、ヨーク、シェフィールドは、ロンドンを北上したヨークシャー州にあります。
ヨークシャーのあたりは自然が多く、牧草地で牛や羊が草を食んでいるような風景が広がります。映画「ハリー・ポッター」シリーズの撮影も、いくつかヨークシャーで行われました。
リーズはイギリスで5番目に大きい都市。
歴史的には繊維産業、特にウール産業で発展し、現在では金融サービス、法律事務所、IT企業などが多く集まっています。イギリスのデパート「M\&S(マークス&スペンサー)」の発祥の地としても知られています。
ハロゲートは、かつて温泉観光地として非常に栄えた町。
一時期は、南の温泉地「バース」に匹敵するほど多くの観光客を集めていました。また、「エルキュール・ポアロ」「ミス・マープル」で知られるアガサ・クリスティが失踪した際、潜伏していたのもこの町でした。彼女の失踪がきっかけで、ハロゲートの名も広く知られるようになったといわれています。ハロゲートは、ヨークシャー内でも一、二を争う「ポッシュ(高級)な街」としても知られています。
ヨークは、イングランド北部にある歴史ある都市で、ローマ時代からの長い歴史を誇ります。
中世には宗教の中心地として栄え、現在も壮大な「ヨーク・ミンスター大聖堂」が圧巻です。城壁に囲まれた旧市街や石畳の小道も残されており、観光地として高い人気を誇ります。鉄道博物館やチョコレート産業の歴史も有名で、文化と観光が融合した魅力ある街です。
イギリスを代表する女優、ジュディ・ディンチもヨークの出身です。
シェフィールドは、イングランド南ヨークシャーにある都市。
産業革命期に鉄鋼業で大きく発展しました。特に高品質な刃物やステンレス鋼の生産で世界的に知られ「スチール・シティ」とも呼ばれています。シェフィールド大学をはじめとする教育機関も充実しており、文化、音楽、スポーツも盛んな街です。
映画「フル・モンティ」は、シェフィールドが舞台になっています。
町も学校も「ツールドフランス」でもちきり
出発・ゴール地点の市町村はもちろんのこと、通過する町や村でも、「ツール・ド・フランス」に関連した飾り付けがあちこちに見られます。
先日訪れた街では、黄色く塗られた自転車や万国旗が至るところに飾られていました。
さらに、ボランティアの人たちが編んだ「ツール・ド・フランスのバンティング(Bunting:万国旗のカラフルバージョン)」も、あちこちに吊るされています。


ツール・ド・フランスに限らず、編み物関連のボランティアを募ると、いつも十分すぎるほど人が集まるようです。羊が多いイギリスならではなのか編み物をする人がとても多く、孫が生まれるとおばあちゃん手製のカーディガンやセーターが贈られる、という話もよく耳にします。私も子どもが生まれたとき、お隣さんがカーディガンやセーターを何枚も編んでくださいました。
地元の小学校では、「ツール・ド・フランス」そのものについて学ぶのはもちろん、「通過する町や村にはどんな特徴があるのか?」というテーマでリサーチを行い、ローカルスタディに活かしているようです。また、「バンティングのデザインを考えてくるように」という宿題などもあるようです。
ヨークシャーポスト(Yorkshire Post)
私が気になって購入したのは、地方紙「Yorkshire Post(ヨークシャー・ポスト)」の折り込みに入っていたポスターです。
A3サイズの大きさで、第一日目と第二日目のルートがイラストで紹介されており、ヨークシャーを観光する際にぜひ押さえておきたいポイントも趣のあるタッチで描かれています。
・Leeds(リーズ)のタウンホール
・Skipton(スキップトン)のスキップトン城
・Harrogate(ハロゲート)のロイヤルホール
・York(ヨーク)のヨーク大聖堂
・Haworth(ハワース)のブロンテ姉妹の邸宅
・Sheffield(シェフィールド)のタウンホール
同じデザインの記念ティータオルも販売されていたので、新聞とティータオルの2種類を記念に購入しました。


ツールドフランスの「色」の意味って?
「ツール・ド・フランス」と言えば、このカラーでしょう!というぐらいおなじみの「黄色・緑・白・赤の水玉」の色が町にあふれていますが、この4色にはそれぞれ意味があります。
・黄色(マイヨ・ジョーヌ)
「マイヨ・ジョーヌ」とは、人名のようですが笑、これは個人総合成績のトップに立った選手だけが着ることができるシャツの色です。「どの選手が1位なのかすぐにわかるように」という目的もあるそうです。
この色を着ることは「ツール・ド・フランス」において大変名誉なことで、選手たちが目指すカラーです。そのため、街のあちこちに飾られている自転車が黄色なのです。
・緑(マイヨ・ヴェール)
「ポイント賞( points classification)」の色。
スプリント地点などのチェックポイントで順位に応じてポイントが与えられ、その合計ポイントのトップが着ることができます。
・白地に赤の水玉(マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ)
これは「山岳賞」の色で、ベスト・クライマーに贈られます。峠を登った順に「山岳ポイント」が与えられ、登り坂の距離や勾配に応じてポイントが区別されています。
・白(マイヨ・ブラン)
新人賞の色で、25歳以下の選手が着ることができます。