2023年5月6日のチャールズ国王戴冠式での「レガリア」とは
(画像:「The Illustrated Coronation Edition」より)
203年5月6日に行われるチャールズ国王の戴冠式では、王冠、王笏、オーブ、王剣、拍車、腕輪、指輪といった「レガリア」が登場します。
「レガリア」とは、式典のような場での王権や特権を象徴するようなアイテムのことを意味します。
当時の宗教的、政治的信条を反映した複雑なデザインで飾られ、すべてに意味を持たせていました。
1661年のチャールズ2世の戴冠式のために、金、銀、宝石などの貴重な素材を用いて丁寧に作られました。
オリジナルのレガリアは、1649年のチャールズ1世の処刑のときに、共和国の指導者であったオリバー・クロムウェルにより「偶像崇拝」とみなされました。そしてすべて溶かして金貨にされたり、売却されたりしました。
1660年にチャールズ2世が王政復古を果たし、新しいレガリアが作られ、その内難点かは今でも戴冠式で使用されています。
チャールズ国王戴冠式でのレガリア
(画像:「The Illustrated Coronation Edition」より)
聖エドワードの王冠(St. Edward’s Crown)
この王冠は1661年にチャールズ2世の戴冠式のために作られたもの。
重さは2.23kg、戴冠の瞬間、王の頭に被せられます。
使われるのはこの時だけです。
オリジナルの王冠は11世紀にまでさかのぼるとのことです。
1649年にオリバー・クロムウェルが王政を廃止するまで戴冠式に使われていました。
レガリアが売却されたり燃やされたりした際に、生き延びた金の一部がチャールズ2世のための(現在の王冠)に使われたと言われています。
また、この王冠はできるだけ忠実に「エドワード懺悔王」の王冠を再現していると言われています。
懺悔王とは・・・
イングランド王、エドワード(Edward the Confessor)の異名、1042~66年在位。
苦難を乗り越えて信仰を貫いた聖人。
カトリック教会がこのような聖人に「コンフェッサー(懺悔王)」という称号を与える。ウェストミンスター寺院を建設した。
歴史上、この王冠がウェストミンスター寺院の外に持ち出されることは厳禁だったため、外で君主が被るために王冠(後述)がもう一つ作られました。
この王冠は国家元首としての君主の主権と権威、そして英国国教会を象徴しており、
・22カラットの金
・2.23キログラム(4.9ポンド)
・紫のベルベットのはアーミン(オコジョ)で縁取られている
・ローズカットのアクアマリン、ホワイトトパーズ、トルマリン、ルビー、アメジスト、サファイア、ジャーグーン、ガーネット、スピネル、カーバンクルなど、444個の貴石と半貴石で装飾されている
といった特徴があります。
インペリアル・ステート・クラウン(Imperial State Crown)
戴冠式の終了時、行列の際、国会の開会式といった正式な場で着用されます。
つまりは「国王の仕事用の王冠」です。
この王冠は1937年に国王ジョージ6世の戴冠式のために作られました。
(もともとは1838年にヴィクトリア女王のために作られたものの、女王の目前で落ちて壊れるというアクシデントがありました)
2,868個のダイヤモンド、17個のサファイア、11個のエメラルド、269個の真珠で装飾されています。
これには、ウェストミンスター寺院に再埋葬されたときのエドワード懺悔王の指輪から取られたと言われているトップクロスの聖エドワードのサファイア、ブラックプリンス・ルビー、スター・オブ・アフリカ(カナリンII)を含んでいるとのことです。
メアリー女王の王冠(Queen Mary’s Crown)
戴冠式ではカミラ妃(クイーンコンソート:Queen Consort)も戴冠します。
冠は金と銀でできており、重さは1.03kg。
2,200個のダイヤモンドが使用されており、故エリザベス女王に敬意を表して、故女王がブローチとして身に着けていたカリナンIII、IV、Vのダイヤモンドが含められるとのこと。
戴冠式後、クイーンコンソートはカミラ女王と呼ばれることになります。
王笏(scepter)
チャールズ国王は戴冠式で、王権を象徴する王笏(セプター)を2種類を手に持ちます。
・十字架がついている王笏
「The Sovereign’s Sceptre with Cross」
時間的権力と正義を象徴しています。
これは、カリナンIダイヤモンドが装飾され、戴冠式や玉座に着席している間、国王の右手で握られます。
・鳩が装飾された王笏
金と白の鳩が装飾された王笏。
鳩は精霊を表し、王の生涯を象徴的に導くことを意味しているとのこと。
左手で握られます。
カミラ妃の笏
カミラ妃も2本の笏を持ちます。
国王と妃の権威と精神性を象徴しています。
・十字架がついている笏
「The Queen’s Sceptre」
・鳩が装飾された笏
「The Queen’s Sceptre with Dove」
象牙の杖の上に金の鳩が装飾されています。
ウィリアム皇太子が象牙取引に反対するキャンペーンを行っていることから、この笏使用されないのではと言われていましたが、使用予定だとバッキンガム宮殿が発表しています。
ソヴリンズ・オーブ(The Sovereign’s Orb)
ソブリンズ・オーブは、金でできた中空の半球2つに、600個以上の宝石が装飾されたものです。
1661年のチャールズ2世の戴冠式のために作られ、それ以来、すべての戴冠式で使用されています。
カンタベリー大司教によって国王の右手に置かれ、地上における神の力を意味します。
地球を象徴しており、中世イギリスで信じられていた3つの大陸に分けられ、世界的なキリスト教の権力を表しています。
王剣(St Edward’s staff)
1661年にチャールズ2世の戴冠式のために作られたもの。
国家の力が神に奉仕するためにあるということを示しています。
長さ1.4メートル(4.6フィート)の儀式用の剣は、かつてリチャード3世、エドワード6世、メアリー1世、エリザベス1世、ジェームズ1世の戴冠式の行列で担がれていましたが、破壊され、レプリカが作られました。
戴冠式で担がれるものの、特に式の中では何かに使われるというわけではなようです。
献上剣、拍車、腕輪、戴冠式の指輪
宝石で装飾された献上剣(The sword of offering)は、式の中で、塗油の後、国王に授けられます。
そして、王は、拍車、腕輪といった多くの象徴的なものを贈られます。
拍車は騎士道と騎士道のシンボルであり、弱者や教会を守るという騎士の価値観を表しています。
腕輪は、君主と国民との間の絆、誠実さや知恵を象徴しており、両手首に装着されます。
戴冠式の指輪は、サファイアとルビーの十字架で、国民との結婚を象徴しています。