どうしてイギリスでは洗剤の泡をすすがないの?

日本のテレビ番組でも紹介されていたようです。
「イギリス人は皿洗いをするとき、洗剤の泡を流さない・・・」
って。
「は?泡を流さないって?どいうこと?」
「どうやったらそんなことになる?」
って思いますよね。
日本人は食器を洗えば「よくすすぐ」が当たり前のこと。
イギリスにやってきてイギリス人の皿洗いを見てびっくりする人が多いです。
私も驚愕しました。
何かの間違いかと思いました。
そして、同じ時期にイギリスに来た人たちに、その話をしたら「だよね?そうだよね?!」と大いに盛り上がりました。
(Image by Photo Mix from Pixabay)
イギリスでは食器洗いの洗剤を流さない・・・
結論から言うと「泡がついたまま、すすぎません」
これは、ズボラというわけではなく、洗剤風味が人気というわけでもなく笑、こういう「文化」と言った方がいいのかも。
で、以下がその方法です。
その「すすがない」お皿の洗い方は・・・
1. 栓をしたシンク、洗い桶に洗剤を適当に回し入れます。
(洗剤のボトルには「1回し入れたら十分です」と書かれている)
2. そこに水やお湯をざーっと流し入れ、
3. その中で食器をスポンジとかDishcloth(ディッシュクロス:食器を洗う布(台ふきんのような素材)で洗います。
4. 食器に食べ物がついていないのを確認したら、その食器を、シンクの隣の水切りにのせておしまい!
そうなんですね。
泡がついたままなんですね。
泡というのは「洗剤」ですよね・・・。
で、洗剤の泡には「汚れ」も入っていたりします・・・よね。
最初のカルチャーショック
私が初めてイギリスに来たとき、ホームステイをしました。
食事が終わって、皿洗いを手伝います。
ホストファミリーが、泡がついたままの食器を水切りにどんどん重ねていきました。
私は、
「いったん横に置いて、この後、すすぐのかな?」
と、思っていたら、
そのホストファミリーは、泡がついたままの食器を布巾でどんどん拭いていくのです・・・。
「え・・・す、すすがないんですか・・・?!」
私はうろたえながら、そう質問しました。
そうしたら、その人は「何の質問かしら、この人?」というような口調で、こう返答しました。
「え?!・・・洗い桶の中ですすいだわよ?」
この人のやり方なのか?
何か意味があってやっているのか?
しばしの沈黙があって、「もしかしたら、これがイギリスのやり方なの?」と、ぼんやりと悟り始めた私は、失礼のないように、
「ええと・・・、日本では洗剤はあまり体に良くないといわれています。
そのため、流し水でよくすすぐのですが・・・。」
「あらそうなの?でもFairyはいい洗剤よ~」
と論点がずれ始め、しまいには、
「○○(私の名前)は洗剤を入れ過ぎなのよ~、フフフ」
と、かる~く指摘されてしまいました。
とっても、とっても納得が行きませんでした。
ホームステイの期間中、どうしても、どうしても、その洗い方だけは受け入れることができませんでした。
だから、ホストファミリーが見ていないとき、泡をきれいに流したり、軽くすすいでから食器を使ったりしていました。
ちなみにFairyとはこのブランドです。
私もこのブランドは好きです(安心してください、すすいでますよ~)。
その頃、同じようにホームステイをしていた日本人が何人かいました。
その中の1人がステイしていたお宅で開かれたBBQに招待されました。
その日本人は、最初は「皿を洗わないなんてありえない」と言い切っていました。
それなのに、BBQの日、食器洗いをしていた彼女は、
「イギリス式で洗ってみました~」
と、泡泡のお皿を片付けていました。
「お前もか~」と、心の中で叫んでしまいました。
もうそれが文化だから仕方にない
これはイギリス文化の1つなので、どうしようもないと思います。
旦那も最初の頃は、泡を残したままでした。
「それだけは(他にもあるけど笑)我慢できないからやめてほしい」
と、お願いしました。
たいていはすすいでくれているようですが、たまに忘れることも。
今は食洗機があるので、旦那が洗おうがどうしようが、食洗機の熱いお湯ですべてきれいさっぱり流しているので、我が家の泡の心配はありません。
イギリス人が洗剤をすすがない理由は?
もしかしたら、イギリスの洗剤は体にやさしい成分で作られているかも?と思ったこともありましたが、
普通の食器洗いの洗剤です。
「口に入れても安全・無害」というわけではありません。
「Fairy(フェアリー)」というブランドだから大丈夫という問題でもない。
なんですすがないの?
これには、諸説あるようです。
・水を節約していたころからの名残り
・水があまりきれいじゃないので、洗剤で殺菌できる
・体の中に入っていても大丈夫な成分
・それが正当な洗い方だと思っている(不思議に感じない)
例えば、洋画のお風呂のシーンがあります。
おしゃれなバスタブ、泡泡のお湯、バスローブが想像できますよね?
欧米の人たちは、泡泡のお風呂にドボンと入ります。
お湯の中につかりながら体を洗います。
お風呂から上がるときには泡を落としません。
そのままタオルでぬぐってしまうのです。
タオルを使わずに、泡泡のままバスローブを羽織ってしまう人もいます。
バスローブはタオルも兼ねているということです。
ちなみに、お風呂のお湯はシェアしません。
中で体を洗いましたしね・・・。
ヨーロッパは乾燥しているため、泡を残すことで肌をしっとりさせたり、いい匂いを持続させたり、といった効果を期待しているところもあります。
お風呂についてそのような考え方なので、お皿についた泡には、
「お皿を殺菌する効果」とか
「何かいい効果」
があると信じているのかもしれません。
テレビのせいもある?
洗剤をすすがないのは、テレビが原因という説もあります。
テレビ番組だったか、洗剤のCMだったかはちょっと不明ですが、皿洗いのシーンがありました。
さわやかに、楽しく、清潔なイメージで食器を洗うのですが、そこで、泡をつけたまま食器を水切りに置いていたので、それが国民の脳裏に焼きついたのかもしれません。
そして、それが代々受け継がれてきた。
一時期、洗剤のメーカーが「洗剤はきちんと洗い流しましょう」キャンペーンをしたことがあるそうです。
しかし、一度定着してしまった意識や習慣は根強いものがあり、あまり変化はなかったようです。
きれいにすすぎたいイギリス人もいる
でも、「きちんとすすがないと気持ち悪い」と、感じているイギリス人も一定数いるようです。
最近は食洗機を持つ家庭が増えているので、「きれいさっぱり気持ちよくすすぎを行っている」という人もいれば、知らないうちに(笑)あずかり知らぬところで(笑)、機械によりきれいさっぱりすすがれてしまっている人もいるかもしれません。
イギリスの新聞ガーディアン「The Guardian」のサイトに、読者が(イギリス人ではない)がこの問題に対する疑問を投稿していました。
それに対し、たくさんのイギリス人からの回答が寄せられました。
質問:汚れた洗剤水の中で洗っただけのお皿を使う、というイギリスの習慣が信じられません。
泡がついたままお風呂をでるような感覚なのでしょうか?
回答の一部を抜粋して記しますが、意見が分かれています。
回答1:「あらかじめ食器をすすぎ洗いしてから洗剤水で洗っているので、洗剤水は汚くなりません。
これをすることで、お皿に「洗剤の流れたような跡」がつくことがありません。
逆にすすいだりすると、そのような跡がついてまうようですよ。」
こ、これはどうなのでしょうか?
洗剤がついている状態で、布巾で拭くと、洗剤の跡がお皿につくことがよくあります。お湯でも水でもいいので、流してしまった方がいいような感じがしますが。
回答2:「水で流しながら洗うと、洗剤が流れてしまって洗剤を使っている意味がなくなる。イギリスの蛇口は、「お湯」と「水」に分かれているのですすぐことが難しいです。」
意味わかんねー笑!
蛇口の形状は関係ないと思いますが!
回答3:「あなたのキッチンはちょっと時代遅れのスタイルなのでは?
最近の新しい家には食洗機が備わっているものが多いです。
新しいキッチンシンクを注文すると、すすぎもできるようにシンクが2つに分かれているのでお勧めです。」
シンクが分かれていなくても、水で流せばいいだけのことです。
でも、この回答者はすすいでいるようです。
回答4:「たいていの洗剤メーカーは、すすぐことを奨励しています。
あなたのその『すすいでいないお知り合い』は、あまり注意深くその説明を読んでいないかもしれませんね。」
質問者の知り合いがディスられています笑
回答5:「いつの時代の話をしているのでしょうか?
私が知っている誰もが、流し水できちんと食器をすすいでいますよ。」
回答6:「時代遅れのスタイル」と回答する人がいますが、誰もが新しい家に住んでいるわけではありませんよね?」
「泡をすすぐかどうか」の質問からそれてしまう回答者も登場・・・。
回答7:「私の祖母の洗い方ですが、まず、ためた洗剤水の中で食器をよく洗い、それを水切りに置きます。
終わったら、次に、お湯をためてその中ですすいでいました。」
屋台のお皿洗いみたいで、水が節約できますね。
回答8:「私も、英国へ移住した知り合いも、この習慣には驚いています。」
回答9:「これはおそらくお湯の節約のためなのではないでしょうか?
そうは言っても、これまでに洗剤が原因で大きな病気をした人を見たことがありません。」
「洗い流さない派」の人は「Ecover(エコベール)」なんかを使ったらいいのかもしれませんね。
回答10:「イギリス人ってすすぎませんよね。
もし私が泡泡で洗っているところを私の母が見つけたら、私の腕を切り落としてしまうかもしれません。
私は食洗機を持っていませんが、ちゃんとすすいでいます。
ついでに言うなら、洗った後、布巾でも拭いていません。
水きりに立てておけば自然に乾いてしまいます。」
回答11:「皆さん本当に神経質ですね!
お皿が良くすすがれていないから病気になった人なんて聞いたことがありませんよね?
食器についた食べ物がきれいに落ちていれば何も問題ないはず。
食器がどれだけきれいになったかと考えたり実行していることに時間を費やすより、もっと他に解決しなくてはいけない問題があるのではりませんか?
こうやって論点がずれていくのかも・・・笑。
回答12:「すすがないのは悪い習慣だと思います。
多くの人が泡を残したままにしているようだし、すすがない私の友人は、ただ単にそのように育ってきただけです。
水を節約するためだと主張している人もいますが、水を節約するために健康を損なうのは嫌です。」
回答13:「私はイギリスに数年間滞在している米国出身者です。
私もこの習慣に気づいています。
多くの洗剤は、比較的新しい成分でつくられているため、長期間その成分にさらされるとどのような影響を受けるのかはまだ分かっていません。」
回答14:「私は食器をすすぎません。
その方が、布巾で拭いた後、食器に跡が残ったりしません。
洗剤水に入れる前に食器をちょっとすすいだり、汚れを拭きとっておけば洗剤水自体が汚くなることはありません。
もちろん、汚れが少ないものから洗います。
それで汚れが落ちないようだったら、もう一度薄い洗剤数をつくって洗います。」
最初にすすげるなら、それを後に持ってきてもいいのでは・・・とも思いますが。
回答15:「スコットランドに住んでいますが、こちらでも皆さん泡を流さないですね。
最初はその人だけなのかと思っていましたが、これが英国全体のスタンダードだということを知りました。」
回答16:「『泡を流さなくても大丈夫』というのは、『歯磨きをしてもすすがない』『体を洗っても泡を流さない』と同じことです。
その泡には、落とした「汚れ」が入っていますよね?
食洗機も洗濯機も「すすぎ」のサイクルがちゃんとプログラムされています。
きちんとすすいだ方がいいですよ。」
回答17:「科学者だった私の祖父も『すすぎは重要だ』と言っていました。
これは、その問題に対する教育不足だと言えます。」
回答18:「アメリカの洗剤には『食べないでください』『誤って口にした場合、直ちに毒物管理センターにしてください』などといった文言が印刷されています。
きちんとすすがれていない食器から食べるべきではないと思います。」
回答19:「アメリカからイギリスに嫁いできました。
イギリスの皿をすすぎない奇妙な(そして不健康な)習慣に戸惑いました。」
回答20:「私はイギリス人ですが、『すすがない』習慣が信じられません。
これはイギリスだけでなく、オーストラリアでも見られます。
洗剤にはホルムアルデヒドのような成分が含まれているものあります。
私はそういった成分を少量でも体に入れたいとは思いません。」
回答21:「イギリスのとある洗剤のCMで、新商品を紹介していました。
その内容は『すすぎが必要ない洗剤』というもの。
もともと私の家族はすすいでいましたが、その商品を購入して使ってみました。
でも、結局、『きちんとすすぐ』ことに戻しました。」
回答22:「イギリス人と結婚しましたが、彼も彼の親せきも、私の友達も、みんなすすぎません。
主人は「少しの洗剤なんだから殺しはしないよ」といいますが、気持ち悪いです!」
おわりに
考え方の違いといったらそれまでですが、イギリス人はそこまで神経質ではないようです。
手を洗うことの大切さはもちろん知っていますし、ハンドウォッシュの種類も多いです。
でも、外から帰ったら全員が手を洗うわけではありませんし、レストランでもおしぼりなんて出てきません。
それでもイギリス人はピンピンしています。
日本人よりもタフですから・・・。