チャーリング・クロス街84番(84, Charing Cross Road)色あせない映画
「チャーリング・クロス街84番(84, Charing Cross Road)」を「ラブ・ストーリー」と説明しているサイトを見かけましたが、断じてラブ・ストーリーじゃないですよー!
「国境を越えた友情」といった方がしっくりくると思います。
アンソニー・ホプキンズ演じるフランクには家族がありましたし、恋心を抱いていた描写はありませんでした。
イギリス紳士のフランクは、誠実かつ丁寧にヘレーヌのための書籍を手配したり、また、ヘレーヌはフランクの妻を訪ねたりしています。
ですので、ラブストリーなどと期待して観始めないようにご注意を!
ドラマチックなハプニングがあるわけではないのですが、観終わった後にすがすがしい充実感がもたらされる映画であることはお約束します~。
本当に素敵な映画です。
(あらすじ:チャーリング・クロス街84番(84, Charing Cross Road))
NY在住の脚本家のヘレーヌ(アン・バンクロフト)は、入手したいと古書をアメリカ内では思うように見つけれないことにいつも不満を感じていました。
ある日、ヘレーヌは「ロンドンのチャーリング・クロス街84番にある古書店」の広告を見つけ、海を越えてロンドンから古書を購入することにしました。
「欲しい本のリストです。それぞれ5ドル以内で購入できるなら送ってください。」
ロンドンから届いた古書はとてもいい状態のものばかりでした。
そして一緒に同封されていたのは、書店の店長であるフランク(アンソニー・ホプキンズ)からのイギリス紳士らしい礼儀正しくて丁寧な礼状でした。
「都合がつく分だけを発送します。残りについてはまた後ほど。」
こんなビジネスライクなやり取りから二人の文通が始まりました。
物書きを生業としているヘレーヌと、書籍の取り扱いを仕事にしている二人の文章は洗練されており、ユーモアにもあふれていました。
ヘレーヌはフランクだけでなく、従業員やフランクの妻にも手紙を送ったり、当時のイギリスが戦後の配給の時期だったためフランクや従業員たちにハムや卵を送ってあげたりしました。
ハムも卵もしばらく口にすることができなかったので、書店の関係者たちはとても喜びました。
こんな風にイギリス人とアメリカ人の振舞い方や当時の文化の違い、当時のイギリスの食料事情といったことを垣間見ることができるのは興味深いです。
「いつかはチャーリング・クロス街84番を訪ねたい」と語っていたヘレーヌですが、なかなか叶いません。
一度はロンドンを訪ねる寸前までいったのに、彼女の歯の治療を捻出なくてはならず断念。
そうして願いが叶うのは、20年も経ってからなのです。
しかし、ヘレーヌは結局フランクに会うことはできません。
彼はもう亡くなっていたからです。
そして彼女は「Here I come.」と一言つぶやきます・・・。
その一言は「たとえ会えなくても、心は繋がっているから」という気持ちが詰まっているかのように、私には聞こえました。
できることなら実際に顔を合わせて手を取り合って欲しかったです。
でも、こういうのもアリなんだと感じました。
相手を思いやる気持ちは、場所も時間も超えることができる決して色あせないものなのです。
こんな風に大切に思う人がいて、思いを馳せることができるのは素晴らしいですねー。
大きな事件が起きるわけではない映画でしたが、自分でも驚くほど深く心に刻み込まれています。
人生ってこんな風に送ってもいいんですね。
ロンドンに行ったら「84 Charing Cross」の前で記念写真を撮りたいですね。
文章でも読んでみたかったので原著も手に入れました。
2人のように、こんなに美しい文章をかけたらいいなと思います。
もちろんDVDは保存版として購入しました。
アンソニー・ホプキンスは猟奇的な「ハンニバル・レクター」のイメージがつきまとってしまいますが、古書店長のフランクや、日の名残りの執事役のようなイギリス紳士的な役柄もピッタリだと思います。
私が観たのは海外版です。
84 Charing Cross Road(イギリスのアマゾン)
追記(2016年7月8日)
その後、ロンドンへ行く機会か何回かあったので「84 Charing Cross」を訪れてみました。
もちろん「古書店」はそこにはもうありません。
イタリアンレストランになっていたようです(というか、どこか「84」なのかも不明でしたが笑)
今でも「84 Charing Cross」のファンがちらほらと辺りを訪れているようです。