イギリスの学校給食事情(現在)

2022年2月8日

イギリス給食事情

2014年9月から、レセプション、イヤー1の学齢期の子どもたち、無料の学校給食(スクールランチ)が供給されることになりました。

子供たちは「温かくて」「栄養があり」さらには「できるだけ野菜を多くとれるような」食事ができるとしています。

これにより「学業にも良い影響を与えるはず」とのことうです。

でも、日本人の感覚からすると

「は?『温かくて』『栄養があり』さらには『できるだけ野菜を多くとれるような』給食?!?!

それって当たり前じゃないの?!」

て、思いますよね。

イギリスセレブシェフによるキャンペーン

まず、イギリスには給食(スクールランチ)はありますが、希望者が毎週お金を払って利用します。

または、低所得家庭の児童や生徒(申請要)は、給食を無料で利用できます。

お弁当を希望する人は、家から持参します。

この度、ナーサリーイヤーとイヤー1(日本だと幼稚園ぐらいの年齢)の給食が無償になり、多くの児童が利用できるようになりました。

このように至った背景には、

・イギリスの少女による「給食の質の悪さ」に対する不平
・TVセレブシェフのジェイミー・オリバーによるキャンペーン

が影響していると言われています。

ジェイミー・オリバーとは

ジェイミー・オリバーとは、98年、イギリスの料理番組「Naked Chef(裸のシェフ)」で人気になったシェフ。

裸で料理をしていたというわけではなくて笑、シンプルで美味しい料理を作ろうとするそのスタイルからそう呼ばれるように。

リラックスした話し方、分量は大体、野菜は手でちぎり、キッチンや庭にあるハーブをぶちっとちぎってささっと洗う。たまにハーブを洗わないことも笑。

若い頃のジェイミーは格好良かったんですよ(遠い目)。
イケメンで、オシャレなスクーターに彼女(今の奥さん)とまたがり、バンドなんかもやっていました。

給食の内容が変化??

セレブシェフのジェイミー・オリバーは、少女が投稿した

「貧相すぎる給食の内容(参考記事:イギリス、9歳の女の子が給食の献立をブログで訴える)」

の写真を見て、イギリスの学校給食を向上させるキャンペーンを大々的に行いました。


(画像:ジェイミー・オリバー、http://www.independent.co.ukより)

彼のネームバリューも手伝って、キャンペーンは成功したようです。
(その後アメリカでも同じキャンペーンをしたようですが、こちらは惨敗だったようです。)

面白いことに、1950年代と、その40年後の1990年代の学校給食を比較してみると、1990年代の方がより糖質・脂質が多くクオリティが低いそうです。

食生活は豊かになっているはずなのに・・・興味深いですよね。

ジェイミー・オリバーのキャンペーンでは、

「ジャンクフードや加工食品を学校食堂から廃止すること」

を徹底し、新鮮な野菜や果物をとることを勧めました。

日本の給食を知る日本人なら

「そんなことは当たり前すぎるんだけど、何の話???」

ですよね?

日本では昭和の頃から、栄養のある「給食」や「お弁当」なんて普通にやってきたことです。

月の初めには給食の献立表が印刷されて、栄養素の内訳なんかも詳細にありましたよね・・・。

キャンペーンが始まって間もなく、英国政府とブレア首相は「学校給食を改善する」と公約しました。

同時期に「学校給食改善」を要請する20万人以上の署名も政府に届けられています。

ただ、テレビ番組の中の一部の子供たちは、新鮮な野菜や果物を食べ慣れていなかったり、栄養満点の給食を目の前にして泣いてしまったり、残してしまったり・・・ということがありました。

学校給食の質うんぬんよりも、家庭での食の質も見直さないといけないのではないでしょうかね?

豆のコスチュームを着て食べさせようと頑張るジェイミー笑、頑なに食べようとしない子供・・・。


(画像:http://www.standard.co.ukより)

これまで行っていた調理方法、メニューの決め方が一変することになり、子供たちにとってもお昼の内容ががらりと変化します。
それに適応できなくて、パックランチ(弁当)を持ってくる子供が増えた例もあったようです。

また、しばらく時間をおいて、ジェイミーがキャンペーンを行った学校に再び訪れると、彼の健康的なメニューは人気がなく、子供たちもジャンクフードを食べるという前の習慣に戻りそうになっていたところも。

給食の取りまとめをする責任者は、調理方法が変わったせいで仕事が増えてしまっているのに加えて、以前のジャンクフードなメニューで得ていた収入が1万ポンド以上の赤字に変わってしまった不平を漏らしています。

それにもめげず、ジェイミーは別の地域で、

・調理するためのキッチンを建設したり、
・地元のカフェ、レストラン、ホテル、タクシーといった業者と提携して温かい食事を学校へ運ぶ工夫をしたり、
・コストを抑えるために地元のサプライヤーから食材を調達したり

といった工夫を続けました。

2009年には、健康的な給食を食べることで、子どもたちの学校での成績が向上した例が報告されています。

彼の活動は、実を結んだようです。


(画像:http://www.bbc.co.ukより)

賛否両論とイギリス人の習慣

給食無償化について、イギリスの政府や栄養関係の面々は、

「パックランチ(弁当)を持ってくる子供の栄養は偏っている。
暖かく栄養のある食事をすることで学力もアップする」

と、このキャンペーンに肯定的であり、その他の関係者も、

「小さい頃に栄養をたくさん与えれば、それだけ早くベネフィットを得られる。」

「政治家たちが、栄養をとることとの大切さを意識したのは素晴らしい。
低所得家庭にとってもいいことだ」

と喜んでいるようです。

BBCに寄せられたコメント

BBCに寄せられたコメントの中には、批判的なものがちょっと多いような印象でした。

「我が家では健康的なメニューを意識してパックランチ(弁当)を
持たせている。
学校でどんなメニューが出されるか分からないから不満」

「チップス(フライドポテト)しか食べない子供にヘルシーな給食を与えても食べないのでは?」

「今度の選挙で入れ替わったら無料給食が中止になるのでは?」

等々・・・。

この無料のスクールランチ(学校給食)は現在はイギリスのみ支給、
ウェールズ、スコットランド、北アイルランドでは検討中だそうです。

おわりに

食べ物がまずいことで知られているイギリス・・・。

引っ越す前の学校ではほとんどの子が給食だったので、うちもそうさせていました。

で、学校の帰りに「今日のランチは何が出たの?」と聞くと、

メインには、ラザニア、パスタ、フィッシュフィンガ―(魚のフライ)、ピザが多く、

デザートには、チョコレートケーキ、アイスクリーム、フラップジャック(オーツをシロップで固めたもの)、マフィン・・・

等々がありました。

今は、子供たちは特に「スクールランチが食べたい」と希望しているわけではないので、お弁当を持たせています。

BBCのコメントにもあったように、その方が私の方で中身をコントロールできるからです。
イギリスだと、日本のような「キャラ弁」のような頑張ったお弁当にする必要がないので楽です。