クランフォード(Cranford)
「クランフォード(Cranford)」は、1849年から1958年にかけて出版されたイギリスの作家エリザベス・ギャスケルによる小説です。
1851年から1853年にかけて雑誌『Household Words』に連載されました。
ギャスケルが育ったチェシャ―州の小さな町ナッツフォードをモデルに、架空の町クランフォードの生活を描いたエピソードで構成されています。
「クランフォード」は日本語に翻訳されています。
「女だけの町―クランフォード」というタイトルで、小説の冒頭でも「クランフォードには女性が多い」と語られます。
男性の存在が薄いような印象を持ちそうになりますが、男性の登場人物もたくさんいます。
クランフォード(Cranford)
産業革命が近づく1840年代、小さな町の習慣や価値観が変化していく様子がいきいきと描かれています。
裕福ではないけれど、上品で優しい住民が多い町クランフォード。
町での伝統的な習慣、人情、友情、ゴシップ、女性の役割、工業化による変化を受け止める女性たちの姿が生き生きと描かれます。
階級や教育に関しての社会批評も盛り込まれていてとても興味深いです。
エリザベス・ギャスケル
エリザベス・ギャスケルは、ヴィクトリア朝時代のイギリスの小説家、伝記作家、短編小説家です。
1810年9月29日、ロンドンで牧師の娘として誕生、母の死後、チェシャー州ナッツフォードの叔母のもとで育ちます。
ギャスケル牧師と結婚し、マンチェスターに定住。
彼女は、シャーロット・ブロンテ、チャールズ・ディケンズ、ジョージ・エリオットといった著名な作家たちと交流がありました。
息子の死をきっかけに書き始めた小説がヒットして、いくつもの名作を残しています。
社会のさまざまな階層、特に貧しい人々や産業労働者の生活を描いています。
エリザベス・ギャスケルの代表作
・メアリー・バートン(Mary Barton)
・クランフォード(Cranford)
・北と南(North and South)
・妻たちと娘たち(Wives and Daughters)
・シャーロット・ブロンテの生涯(The Life of Charlotte Bronte)
「クランフォード」「北と南」「妻たちと娘たち」は、イギリスBBCがドラマにしており、どれもおすすめです。
その中でも特におすすめなのが「クランフォード」です。
BBCドラマ クランフォード(Cranford)
コスチュームや背景が素晴らしいだけでなく、有名な俳優が揃っていて、ギャスケルの他の短編作品である、
「ラドロウ卿婦人(My Lady Ludlow)」
「ハリソン氏の告白(Mr. Harrison’s Confessions)」
「英国の最後の世代(The Last Generation in England)」
が追加されており、見ごたえがあります。
出演は、ジュディ・ディンチ、アイリーン・アトキンス、イメルダ・スタウントン、マイケル・ガンボン、サイモン・ウッド、ジュリア・マッケンジー、リサ・ディロンといった俳優陣。
プライムタイム・エミー賞を4回受賞し、その他多くの賞やノミネートを受けました。
クランフォード第1話のあらすじ
クランフォード第2話のあらすじ
クランフォード第3話のあらすじ
クランフォード第4話のあらすじ
クランフォード第5話のあらすじ
コスチュームや舞台ドラマがお好きな方にはもちろんお勧めなのですが、ストーリーもとても面白いくて心が温まります。
ユーモアも各所にちりばめられているし、登場人物全員がとても素敵で愛らしいです。
ビクトリア時代の、さまざまな階級の人びとの生活、常識、プライド、
新しい文化(鉄道、最新医療、ファッション、食べ物など)に対する期待、不安、受け入れ方、
新しいものを好奇心と勇気をもって試す人たち、
これまでのしきたりを捨て切れない人たち、
貧しくても勉学のチャンスを与えられるべきだと主張する人たち、
貧しくても心豊かな人たち、富んでいても孤独な人・・・。
ドラマ版は、小説をベースに加筆修正されていますが、こんな小さな町なのにそれぞれのキャラクターが個性的に詰め込まれていて秀逸だと思います。
何度も観てしまうぐらい好きなドラマです。